ドルナのテープレス、ファイルベースライブリプレイシステムを可能にしたのは、K2 Dynoのシステムです。1992年以来、ドルナ・スポーツ社(以下、ドルナ)は、FIM MotoGPワールドチャンピオンシップに関連する業務使用およびテレビ放映権の独占的管理会社として運営されてきました。また、同社はスペイン・ロードレーシング・チャンピオンシップ(CEV)などを含めた他のモータースポーツのマネージメントやマーケティング、配信などの事業も行っています。MotoGP (www.motogp.com)はオートバイレースの頂点として君臨しており、ドルナ社の主力製品でもあり、約60年前に設立されたことからもっとも古いモータースポーツとして知られており、世界有数のワークスやライダーがその技術を競い合う場としても知られています。
年間18ものグランプリは200以上の国の視聴者から観られており、年間およそ51億の人から観られています。
ON YOUR MARK…
MotoGPは高速で、スリル満点のモータースポーツ― 世界有数のオートバイレーサーやバイクが世界中に散らばっている各国のレーストラック上で戦うスポーツです。そして各レースの映像を世界各国のファンに提供しなければならないのが、全世界の放送権利を持つドルナ・スポーツの仕事です。
150人以上のフルタイムスタッフをはじめとし、200名以上のフリーランス制作スタッフを持つドルナは、各レースでのインスタント・リプレイにGrass ValleyのK2 Dynoリプレイ・システムを採用しています。
年間シーズンの18レースは総面積40万平方メートルを約120台のカメラで、あらゆる角度からカバーしなくてはいけません:トラックやパドック、バックロットに設置されている有線カメラをはじめ、オートバイやケーブルカム、ヘリコプターなどからの無線カメラによってトラック上のあらゆる角度からレーサーを追えるように配置しています。
GET SET…
2010年のシーズンに先駆け、ドルナは全てのレースのHD化に移行しなければなりませんでした。理由は簡単で、現在業界とその先の放送局がHDに移行しているからでした。
HDへの移行はあらゆる面で制作ワークフローに関して考え直す必要が出ました。また、ドルナにとってHD化はレース1時間に対し40時間の素材をなるべく自動化しながらファイルベースのテープレスワークフローの確立を意味していたのです。
ドルナにとって最も重要だったのはライブリプレイと編集ネットワークがシームレスに繋がる必要がありました。つまり、オーディオやビデオが転送されるだけでなく、クリップや関連メタデータのマネージメント管理も必要でした。このメタデータをドルナの編集者やリプレイ・オペレータが素材に登録することで、後の人たちが分かり易く利用することができるようになるのです。
この一点、メタデータの入力・管理、がドルナにとっての最大のチャレンジであり、Grass Valleyが自社のまったく新しいリプレイシステムを発揮する絶好の機会でした。それはK2 Dyno ライブシステムとK2 Dynoプロダクション・アシスタント(以降 PA)でした。
プライマリー・リプレイやプレイリスト・オペレーターが扱えるようになっており、Dornaが過去に構築したアップル社のFinal Cutサーバーを搭載したXsan上に登録され、最後にFinal Cut Pro編集ステーションによって検索・アクセスできるようになっています。
GO!
各レースでは2台の大型トラックが使われています。ドルナの要求に即して組み立てられており、イタリアのSBPによって運営されています。一台目のOBトラックは「トラック・フィード」と呼ばれており、メイン・レースのトラック中のからのカメラ映像を提供しています。
インターナショナル・フィードはトラック・フィードからの多重プログラム(リプレイを含む)にGrass Valley Kayak 3 M/Eスイッチャーによってオンボードなどのカメラからの素材を切り替えて送出します。インターナショナル・フィードは一部のフィードの独立録画をしながら、瞬時にリプレイすることができます。その後、最終的にまとめられた映像は、クリーン・フィードかCG素材付きで、国内外の放送局に送出されます。
メタデータの入力はとても簡単だ。素材はサム・ネールを見ればわかるので、クリップがどこにあるのかを考えなくてもいい。俺の弟でさえも使えるほどだ!」
同時に、これら全ての独立録画された素材はその後再編集されパッケージ化するため、チェッカーが降りた際のインスタント・リプレイや放送用パッケージのため、編集ネットワークに転送される必要があります。
MotoGPにとってメタデータとはバイクのライダー名やイベントの種類― 追い越しやクラッシュ、よろめき、トラック位置、そして星の数でクリップの利用価値を示すために使われています。
ドルナが所有する8台のK2 Dyno ライブシステムは1台に付きK2 Summitメディア・サーバーとK2 Dyno リプレイ・コントローラーで構成されており、各オペレーターがクリップを登録したり、タグを付けたり、リプレイをキュー出ししたり、再生し、スピードを変えたりエフェクトを追加したりすることで映像の価値を上げることができます。K2 Dynoリプレイ・コントローラーにはタッチスクリーンが搭載されています。各レースが始まる前には関連するすべての情報タグが前もってK2ネットワークに入力されるので、スクリーンを数回タッチするたけで、簡単に重要なメタデータを追加することができます。
「K2 Dyno PAは我々にとってとても付加価値のある製品だ。なぜなら、そのツールによって我々はネットワーク上のサーバーを完全にアクセスし、コントロールできるからだ。以前我々はワークフローを管理するためだけに3,4人常駐させる必要があった。しかし、PAの登場でこれらの作業が一人で行えるようになった。」ドルナ・スポーツ プログラミング・テクニカルマネージャー Xavier Soler
スクリーンの下の部分には、見慣れたリプレイ用コントローラを搭載しており、オペレーターによって素材をキュー出ししたり、可変スピードを含む素材を安全にわかりやすく再生したりすることができます。
K2 Summitのオープンなネットワーク・インタフェースにより他のソフトウェアによるサーバーへのアクセスを可能にしています。ドルナの制作ワークフローにとってはK2 Dyno 制作アシスタントが重要な要となっています。
K2 Dyno PAはライブ制作コンテンツ管理システムで、編集ネットワーク上にあるサーバー上にある全てのコンテンツやそれに付随するメタデータのアクセスを可能にするのです。3倍速スーパースロー撮影用のカメラを含む40台近くのカメラデータの収録をはじめとし、それらのカメラからのライブリプレイを常時行っているのにもかかわらず、一人のオペレーターがコントロールするK2 Dyno PAによってこれらの素材の流れを管理したり、モニターしたりすることができます。
オンサイトのポスプロ作業を行うため、ドルナでは各ロケーションにてネットワークでつながった25台のアップル社Final Cut Proワークステーションを導入しています。これらはFinal Cutサーバーに接続しているアップル社の64TBXsanによって提供されています。
オープン、かつスタンダードなインタフェースによってK2 Dyno PAはK2サーバーネットワークとXsan編集ネットワークの連携を管理してくれます。K2 Dyno ライブシステムのオペレーターによって選択された素材はメタデータを含めて転送されるのです。
K2 Dyno PAはさらにルールベースのエンジンを採用しているため、どのコンテンツをどこに転送するのかを判断してくれます。レースが始まる前にはシステム管理者によりどのルールが使われるのかが決められ、収録素材がいつ転送されるのかが定められます。
K2 Dyno PAはXMLベースのメタデータをFinal Cut Proで使えるフォーマットに変換します。これらのメタデータはAVC-Intraでエンコードされたビデオと共にQuickTime互換のラッパーに転送されます。
Final Cut Proで編集している編集者はこれらすべてのメタデータにアクセスすることができます。特定なタスクを持った編集はデスクトップ上の編集Binに必要なコンテンツが自動的に転送されるようにデスクトップを設定することができ、コンテンツを探したり、確認したりするためにかかる時間を大幅に短縮することができます。
Dorna リプレイ・マネージメント
個別の編集例をあげると、編集部員はレース序盤に一番後ろに位置していたバイクのライダーがその後追い上げ、優勝にまで順番を上げていったストーリーを作成するよう要求されたとします。編集者はバイクライダーの名前から「追い越し」のクリップを選択することで、必要なクリップが簡単に編集者の編集Binに集められるのです。また、メタデータには時間情報が含まれているので、クリップは自動的に時間軸上に並びかえられます。このような機能がとても制作時間を短縮してくれます。
各レースでは、ドルナのトラックやクルーは開催前の金曜日に練習走行で3時間、土曜日のクオリファイ・ランに6時間、そしてレース当日の日曜日には6時間制作を行います。各曜日には1500~2000ものハイライトクリップが作成され、K2サーバーネットワークに登録されます。
K2 Dyno PAの星の数とフィルタリングを使うことにより、前述のクリップの内1000~1500もの素材とメタデータが編集用にXsanに転送されるのです。
残りの放送用センターはレースごとに更なるK2 Dyno ライブシステムを持つユニバーサル・ブロードキャストセンターで構成されており、国際フィードやクリーン・フィード、そのほか必要とされるフィードを収録しながら、最終映像を衛星アップリンクに送出します。
ドルナはスペイン・バルセロナにMotoGP毎の詳細なアーカイブを配置しています。これらは更なるアップル社のXsanサーバーとFinal Cut Serverで構成されています。これらの詳細アーカイブに送られるデータはオペレーターによって作成されたルールに沿って自動的に選択され、キャプチャーして事前に設定されたメタデータによって選定されるようになっています。
Grass Valleyが可能にし、ドルナが最も活用できたのは、詳細な制作を高速かつ的確、使いやすく、プレッシャーを低減させてくれるシステムです。
ドルナ・スポーツ (Dorna Sports)
http://www.motogp.com/
本社: マドリード (スペイン) オフィス: バルセロナ、ロンドン、東京